投影
こころについての概念で共鳴と共に非常に重要な概念の一つに投影と言う性質があります。
一言で言うと、わたしたちはこころの中に存在しているものを、自分が見聞きしている周りの世界に重ね合わせて認識すると言うことです。
一言で言うと単純なのですけど、この概念はけっこう理解が難しくて、心理カウンセラーとして学んだ時にもなかなかうまく掴めませんでした。
簡単な例を挙げると、小学校くらいの時に、作文で「太陽が笑っています」とか「道端のお花が泣いていました」とか書くと、花丸がもらえたりといったお話は想像できると思います。太陽は笑いませんし、お花は泣きません。太陽を見て笑いたかったのも、花を見て泣きたかったのも、作文をした本人ですよね。
こんなふうに、わたしたちは自分のこころの中で起こっていることを周りの世界に投影して感じ取るわけです。
重要なのは、この投影はわたしたちにとって、ありとあらゆることで起こっているというところです。
他の人の言動にどのようにこころが動くかということは投影が大きく関わっています。
心理カウンセリングでよくあるお話としては、男性の上司との関係がうまくいきませんといった話題があります。そうすると、カウンセラーはそのクライアントさんのお父さんとの関係を確かめてみます。ほとんどの場合は、お父さんとの関係が良くないという話が出てきます。
すなわち、
お父さん=権威のシンボル(男性)=男性の上司
という関係がこころの中で形成されていて、お父さんに対して感じていたことを男性の上司に対しても同じように感じるということが起こるわけです。
また、逆にお父さんにとても可愛がられた女性は、男性の上司との関係がとてもうまくいくという例も多いです。
興味深いのは、お父さんとの関係はよくなかったけど、おじいちゃんにとても可愛がってもらって、おじいちゃん大好きという人のケースです。この場合、男性の直属の上司との関係はギクシャクするけども、社長とはとてもいい関係が築けるといったふうになってきます。このケースも時々お聴きします。
ネットで投影を検索すると、"自分の中にある否定的な部分を他の人に映し出すという防衛機制"といった記述が多く見られます。しかし、実際には上記のように否定的なものも肯定的なものも関係なく、さまざまなものが投影されています。実際に何千人もの方のお話をお聴きしてきて、その通りでした。