共鳴

こころについて語る上で重要な概念の一つに共鳴という性質があります。

学校で習ったことがあるかもしれません。音叉を2つ用意して、少し離して、片方を鳴らします。すると、もう片方も離れているのに鳴り出します。これが共鳴という作用です。

感情が共鳴することは身近に見られます。

映画やドラマを見て、感動して涙があふれ出すのは、ストーリーに表現されている感情に共鳴しているわけです。

スポーツ・イベントやコンサートでも、多くの人が共鳴して、感動が広がっていきます。

これらに対して、あまり知られていないのは、2人の人が話している時に、お互いの感情やこころの中の状態が共鳴するという現象です。

共鳴という作用によって、相手のこころの中の状態の影響を受けてしまうのです。

興味深い体験

わたしが経験した興味深い体験があります。

ある情報システム開発プロジェクトでのことです。

そのプロジェクトでは、毎日進捗ミーティングが開かれていました。

1人ずつ、その日の進捗状況を報告していきます。

ある人が、進捗の遅れを報告されました。

それに対して、マネージャーが「なぜ遅れているのですか?どうやって遅れを取り戻すのですか?」と質問されました。

すると、横で聞いているわたしからすれば不自然なくらい、報告された人はしどろもどろで言い訳をされたのです。

その時は、「変だな。なぜあんな風になったんだろう」くらいに思っていました。

ある日、自分が進捗の遅れを報告しなくてはいけない状況がやってきました。

同じようにマネージャーから質問されます。すると、自分も同じようにしどろもどろで言い訳をするような状態になってしまったのです。

その時に気づいたのは、すごい罪悪感を感じていたことです。そして、おそらくその罪悪感は、マネージャーの方のこころの中にあるものに共鳴して感じていたんだろうということが推測されました。周りで聞いているとわからないのですが、マネージャーに対面してみると強烈に罪悪感を感じたのでした。

知っておくことの大切さ

こういった経験は、共鳴というこころの作用があることを知らなければ、「なんか不思議なできごとだった」で終わってしまうかもしれません。

あるいは、その罪悪感に飲み込まれてしまうと、うつ状態になってしまいかねません。

こころにはそういった性質があるというのを知っておくと、自分自身のメンタルヘルスを保つのに役立つかもしれませんね。